有機ELの次? マイクロLEDディスプレイとは
2017年になってようやく日本でも有機ELテレビの市場が立ち上がったばかりですが、ここに来て早くも「有機ELの次」と目される次世代型ディスプレイが注目されています。
それがマイクロLED(mLED)です。この記事では、そんなマイクロLEDディスプレイの特徴を分かりやすく説明します。
目次
どんなディスプレイなの?
まずはマイクロLEDディスプレイの特徴から解説します。
仕組みはこう
マイクロLEDディスプレイは、簡単に言うと目に見えないほど小さなLEDが画面上にびっしりと敷き詰められたディスプレイです。
皆さんのご家庭にもある「LED電球」の中には、電気を通すことで発光する小さなチップが入っています。そのチップよりも更にうんと小さい、わずか100μm(0.1mm)未満という小さなLEDを画面上にびっしりと敷き詰め、それらを発光させることで映像を作り出すのが「マイクロLEDディスプレイ」です。
「赤・緑・青」の3色に発光するLEDを使うので、もちろん映像はカラーです。55インチ相当では各色200万個ずつ、合計600万個を使うと言われています。
液晶ディスプレイとは異なり、自ら発光するためバックライト不要。自発光式のディスプレイとなります。
マイクロLEDのメリット
続いて、マイクロLEDディスプレイのメリットを液晶や有機ELと比較しながら紹介します。
高画質
液晶ディスプレイと比較して、圧倒的に高いコントラストを実現しメリハリの効いた「くっきり」とした画を映し出すことが出来ます。
参考までに、ソニーが2016年に発表した「ZRD-1」のコントラスト比は100万:1。これは3千:1と言われている液晶テレビや、1万:1の有機ELテレビと比べても圧倒的に高いスペックです。有機ELテレビの画質には多くの人が驚かされていますが、マイクロLEDはそれをも遥かに凌ぐというわけです。
方式 | コントラスト比 |
---|---|
液晶 | 3000:1 |
有機EL | 10000:1 |
マイクロLED | 1000000:1 |
また、視野角も液晶ディスプレイと比べて圧倒的に広く前述のZRD-1では「ほぼ180度」つまり真横からも映像を観ることが出来ると謳われています。
自発光式のディスプレイですから、有機ELディスプレイと同じく「黒」の表現にも長けていると言われています。
画面の輝度が高い
マイクロLEDディスプレイは画面の最高輝度が高いです。
ロスが多いため最高輝度を上げられない現在の有機ELディスプレイ(RGBW方式)と比較して遥かに高い輝度を実現できると言われています。
室内で使う分には現行の有機ELでも全く問題はありませんが、屋外で使うスマホやスマートウォッチなどで威力を発揮しそうです。
低消費電力
まだ市販品が無いため実際のところは不明ですが、現行の液晶テレビと比べて低消費電力となりそうです。
ソニーが開発した55インチのマイクロLEDディスプレイのパネルモジュールは「消費電力が70W以下」と、同型サイズの液晶テレビの「約半分」という圧倒的な低消費電力を実現しています。
長寿命
劣化が少なく、寿命が長いという特性もあります。更に、有機ELディスプレイでよく懸念される「焼き付き」についても心配いらないです。
サムスンが量産に向けて準備しているマイクロLEDディスプレイは寿命が「約10万時間」と同社の副社長が話しています。それが事実なら有機ELディスプレイだけでなく液晶ディスプレイよりも「長寿命」です。
マイクロLEDのデメリット・欠点
続いて、マイクロLEDの欠点を見ていきましょう。
現状ではコストが非常に高い
将来的には有機ELを下回るコストで製造できる、というのが大方の見通しとなっていますが、現在のところ製造時の歩留まりの低さなどが製造コストを大きく引き上げています。
海外メディアがマイクロLED関連企業であるPlayNitride社CEOの話として報じたところによれば、スマホ用のパネルを1枚つくるのに現状では300ドル掛かるとのこと。iPhone Xに採用された有機ELディスプレイの原価が80ドルと報道されていますから、コスト面では今のところ太刀打ちできません。
今後の動向
マイクロLEDを取り巻く環境を最後に紹介します。
2018〜19年に製品が発売?
マイクロLEDディスプレイを搭載した商品はまだ世界中で市販されていない段階ですが、2018〜19年に製品が発売される可能性があるとの報道が海外メディアで盛んに流れています。
Appleが台湾にかまえた研究施設でマイクロLEDの研究開発を進めており、2018〜19年には台湾でマイクロLEDの量産を開始する見通しであるとの報道が日経を始め国内外のメディアからされています。
一連の報道では「Apple Watch」にマイクロLEDが搭載されるとの観測も出ており、時期的に「Apple Watch Series4」か「5」にマイクロLEDディスプレイが搭載される可能性がありそうです。
また、サムスンも2018年9月をめどにテレビなどに使える大きさのマイクロLEDディスプレイの量産を開始します。その他、ソニーや鴻海(シャープ)などもこぞってマイクロLEDディスプレイの開発に取り組んでいます。
有機ELディスプレイはどうなるの?
「液晶の次」と言われ現在急速に普及が進む有機ELディスプレイ。では、普及する前にマイクロLEDに取って代わられてしまうのでしょうか?
その可能性はあまり高くはありません。
まだまだマイクロLEDは量産にまで時間が掛かりますし、量産が始まっても当初はコストが非常に高くなるため、すぐにディスプレイの主役に躍り出るという可能性は低いです。
また、有機ELディスプレイについてもまだまだ技術開発が活発な分野です。「印刷方式」による量産を実現することで、製造コストを圧倒的に下げ、消費電力を大きく下げる余地がまだあります。
とはいえ、今後10年くらいの間はマイクロLEDと有機EL、更には「量子ドットディスプレイ」など様々な方式が入り乱れてディスプレイの「覇権争い」が繰り広げられそうです。
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