低消費電力で注目される有機ELディスプレイ
理論上は「液晶ディスプレイの10分の1」とも言われる有機ELディスプレイ。既に多くのスマホに搭載され、そして電池持ちの改善に貢献しています。
ですがテレビのような大画面に関しては、有機ELディスプレイは「低消費電力」とは真逆の状況になっています。この記事では有機ELディスプレイの消費電力について解説していきます。
目次
有機ELテレビの比較＆おすすめ機種の紹介液晶より消費電力が大きい有機ELテレビ
実際の機種のスペックも交えながら解説します。
実際のスペックで比較してみよう
| 有機ELテレビ BRAVIA KJ-55A1 |
液晶テレビ BRAVIA KJ-55X9000E | |
| 消費電力 | 370W | 181W |
| 年間消費電力量 | 226kWh | 158kWh |
上図は有機ELテレビと液晶テレビの消費電力、年間消費電力量の比較です。
同じ55インチサイズの4Kテレビですが、消費電力では有機ELテレビが104%、年間消費電力量では43%も上回り、「液晶テレビの方が省エネ」という事態になっています。
これは決して特異な例ではなく、多くの有機ELテレビが同等スペックの液晶テレビよりも消費電力が大きくなっています。
ちなみに、「年間消費電力量」とは実際の使用条件に近い条件の下、年間に消費すると想定される電力量を表しています。例えばテレビの場合は「1日4.5時間視聴、19.5時間待機」が条件として定められています。
一方、「消費電力」は全ての機能を最大限に使用した場合の瞬間的な最大値を表しています。
したがって、一般的な使用ではカタログに記されている消費電力まで達することは少なく、年間消費電力量と消費電力は必ずしも比例するものではありません。テレビの場合は年間消費電力量の方を見比べるのがおすすめです。
消費電力が大きい原因は？
とはいえ、年間消費電力量で見ても有機ELテレビは液晶テレビを上回っています。理論上は有機ELの方が低消費電力なのに、なぜこうなっているのでしょうか。
現在の有機ELテレビは白色に発光する有機ELパネルに、カラーフィルターと呼ばれる部品を組み合わせることでカラーの映像を映し出しています（液晶ディスプレイも同様の仕組み）
こうした「RGBW方式」と呼ばれる現在の有機ELテレビは、カラーフィルターを光が通過することで輝度が30%以下にまで低下します。7割のロスが生じてしまう分、輝度をうんと上げる必要があり、それが消費電力を大きくする要因となっています。
古い液晶テレビと比較すれば省エネ
| 有機ELテレビ BRAVIA KJ-55A1 |
2007年の 液晶テレビ BRAVIA KDL-52W5000 | |
| 消費電力 | 370W | 315W |
| 年間消費電力量 | 226kWh | 273kWh |
最新機種同士で比較すると有機ELテレビの消費電力は液晶に劣るものの、古い液晶テレビと比較すれば有機ELテレビの方が省エネです。
上図は2017年モデルの有機ELテレビ（55インチのブラビア）と、2007年モデルの液晶テレビ（52インチのブラビア）の比較です。
消費電力では2007年の液晶テレビが「省エネ」であるものの、年間消費電力量では最新の有機ELテレビの方が17%ほど省エネになっています。27円/kWhで計算すると、年間の電気代は1269円安くなる計算です。（液晶についても、この10年で42%も消費電力を減らしているのには驚きですね）
スマホ用の有機ELは低消費電力
現在、テレビで採用されている大型の有機ELパネルは先にも説明したとおり、ロスの多いRGBW方式のため消費電力が大きくなっています。
しかし、スマホ用の有機ELパネルは「RGB方式」といって、ロスの原因となるカラーフィルターが不要の別方式です。なのでスマホの有機ELディスプレイは、液晶と比べて既に30%程度の省エネ化を実現しており、電池持ちの改善に貢献しています。
有機ELスマホのメリット・デメリット今後の技術革新に期待
液晶テレビもこの10年で大幅に消費電力を減らしているように、有機ELテレビにも改善の余地が残されています。まだ市場に出回り始めて間もない商品ですから、改善の余地は大きいです。
現在、ジャパンディスプレイ系のJOLED（ソニー、パナソニックの有機EL事業を統合して出来た会社）などが、「RGB印刷方式」と呼ばれる有機ELパネルの開発を進めています。
この方式ではパネル自体が赤・緑・青に発色・発光するため、カラーフィルターが必要ありません。実現すれば「有機ELテレビは低消費電力」という理論通りの製品が誕生する可能性があります（ついでに、製造コストも圧倒的に安い）
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