有機ELテレビの寿命は液晶テレビの半分
実は、有機ELテレビには液晶テレビと比較して寿命が短いという欠点があります。どれほど短いのか、また実用に耐えうるのか詳しく解説します。
目次
有機ELテレビの寿命を比較する
まずは実際に数値として有機ELテレビの寿命を見てみましょう。
有機ELと液晶テレビの寿命の比較
それでは、テレビの寿命は一般的にどれくらいと考えるべきでしょうか。
ディスプレイ方式ごとの「寿命」は以下のとおりです。
プラズマディスプレイ | 10万時間 |
液晶ディスプレイ | 6万時間 |
有機ELディスプレイ | 3万時間 |
ブラウン管 | 1〜2万時間 |
1日8時間の視聴で、液晶なら20年。有機ELは約10年持つ計算になります。
有機ELは寿命が短いと言われていますが、ブラウン管テレビと同等かそれ以上です。製品としては充分な水準だと言えるでしょう。
もちろん、寿命の年数までしっかり使えるかはどの方式でも個体差が大きいです。特に、10年以上使う場合はディスプレイ自体に問題が無くても、その他の部品の劣化による故障が増えてしまう可能性があります。逆に、寿命が短いブラウン管テレビでも20年以上使えたという例も少なくありません。
ちなみに、総務省『情報通信白書 平成26年版』によると、テレビの平均視聴時間は平日が168.3分、休日が225.4分となっています。週休2日で計算しなおすと、1日あたり184.6分となりますので、1日平均3時間というのがテレビの平均視聴時間です。
寿命「10万時間」という主張も
有機ELパネルの供給元であるLG社では、「2013年に出荷を開始した当初の寿命は36000時間程度だった」としつつも、「現在(2016年)は10万時間に延長されている」と主張しています。
10万時間を過ぎると、少しずつ発光量が減少していくそうです。
「焼き付き」問題
長時間同じ画面を表示し続けることで、その画面がいつまでも残り続けてしまう現象を「焼き付き」といいます。例えば有機ELスマホでは、店頭のデモ機でメニュー画面が焼き付いてしまっている例が報告されています(参考: kakaku.com) 店頭のデモ機は同じ画面を毎日長時間にわたって映し続けるため、焼き付きが起こりやすくなっています。しかし、こんな実例を見てしまうと有機ELテレビを買うのも怖くなりますよね。
焼き付きについては、ブラウン管やプラズマテレビでも同様にリスクが存在しています。これらの方式でも、長時間同じ画面を表示し続けた場合には焼き付きます。したがって、焼き付きは有機EL特有のリスクではありません。
日本企業はリスクに敏感過ぎるとしばしば批判されていますが、ソニーやパナソニックといった日本の大手家電メーカーも既に有機ELテレビを発売して数年になりますが、現在のところ焼き付きについてユーザーから目立った不満の声は上がっていません。
というわけで、一般的な用途では焼き付きの心配をする必要はありません。
とはいえ、長時間同じ画面を表示し続ける用途(例えば空港の行き先案内など)には、焼き付きに強いとされる液晶ディスプレイを選んだ方が無難でしょう。
有機ELテレビ長寿命化の可能性
充分な期間使えることはお分かりいただけたでしょう。とはいえ、液晶テレビの半分しかもたないというのは、せっかく高いお金を払うのにもったいない気がします。今後の有機ELテレビ(OLED)の長寿命化の可能性を考えてみましょう。
可能性1 劣化対策
有機ELテレビの寿命が短い原因として、まずは有機材料が非常にデリケートな物質だということがあげられます。例えばテレビ本体がプラスチック程度の素材で作られていれば、酸素や湿気が簡単に内部に侵入し、有機材料を劣化させていくのです。
ですから、
・酸素や湿気を通しにくい素材の開発
・有機材料の改良(強化)
のどちらかがクリアできれば、有機ELテレビの寿命が延びる可能性は大いにあるでしょう。
可能性2 発光体の改良
また、有機ELテレビに使う発光材料は、先ほど少しふれた「燐光材料」と「蛍光材料」とがあります。「蛍光材料」は既に完成された技術で、3色そろって長寿命。かつコストパフォーマンスや耐久性にも優れています。ただし、残念ながら発光効率は「燐光材料」の25%程度、消費電力は4倍。そのため、最近は寿命の短い「燐光材料(青)」の研究が熱心に行われているのです。
このことを考えると、
・「蛍光材料(青)」の発光効率を上げる
・実用化レベルの「燐光材料(青)」を開発する
いずれかの実現が必要です。もっとも、2015年5月にはコニカミノルタが長寿命(10万時間)の青色燐光材料を開発し、平成26年度化学技術賞を受賞しています。これが研究室レベルを超えて実用化に至り、有機ELテレビの長寿命化に貢献してくれる日はそう遠くないのではないでしょうか。