マイクロLEDテレビの登場で有機ELはどうなる?

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有機ELテレビが普及段階に入ったばかりだが・・


 2018年に入り、有機ELテレビが大幅に値下がりして液晶との差が小さくなりました。そのおかげでようやく「普及段階」に入った有機ELテレビですが、早くも新たなライバルが出現しようとしています。今後のディスプレイ覇権の行方を考えてみます。



2018年にマイクロLEDテレビが発売へ?


 2018年に入り、国内外のメディアが度々「サムスンがマイクロLEDテレビを発売」するというニュースを報じてします。


同社が今年1月に発売したマイクロLEDテレビ「ザ・ウォール(THE WALL)」はB2B(企業間取引)向けの製品だが、B2C(企業対消費者間取引)向けの製品で本格的な市場拡大に乗り出す構えだ。

引用元:サムスン電子 家庭用マイクロLEDテレビを来年発売 (韓国:聯合ニュース)

 別の記事では2018年中に業務用のマイクロLEDディスプレイを1台3000万円前後の価格で売り出すとの報道もあり、2018年から2019年にかけてマイクロLEDテレビの市場が立ち上がることが確実視されています。


 一方、有機ELテレビは2017年頃から急激に価格が下がったおかげで、足元の売れ行きは好調。18年上半期の販売数は前年比で8.6倍(BCN調べ)と、ようやく市場が離陸しました。


マイクロLED VS 有機EL 勝負の行方は?


 そんなマイクロLEDと有機ELですが、今後はどちらが主流になっていくのでしょうか。今後の展開を考えてみました。


当分は有機ELの優位が続くだろう


 2018年から19年にかけて採用製品が発売されるマイクロLEDですが、発売されてすぐにディスプレイ市場を席巻する可能性はゼロに等しいです。


 記事前半でも紹介したように、サムスンが業務用に発売するマイクロLEDディスプレイは1台3000万円と超高額。一般家庭用に発売される製品も、当初は普及には程遠い価格となることが確実視されています(サムスン副社長が米国や中東の富裕層を当初のターゲットにすると表明)


 マイクロLEDディスプレイは極小のLEDをびっしりと並べて映像を作り出す原理です。テレビほどのサイズでは2000万個以上の「LED」が必要となる点や、現在は製造技術が確立されていないため歩留まりの悪さが製造コストを押し上げています。


 海外メディアが報じたところによると、スマホ用のパネルを1枚つくるコストは有機ELが80ドルに対し、マイクロLEDは現状で300ドルと高額です。コスト削減が進むまではマイクロLEDがディスプレイ覇権を握ることは「ありえない」と言えます。


 ちなみに、日本で初めて有機ELテレビが市販されたのは2015年5月(受注生産品の有機ELテレビは除く) そこから液晶テレビと比較できる価格水準にまで値下がりするのに2年以上掛かっています。マイクロLEDでも同様に、コスト低減には最低でも数年のスパンが必要でしょう。


 少なくとも2018年の今、有機ELテレビを購入してもすぐに「時代遅れ」となる心配は必要無いと言えます。


有機ELテレビ

有機ELテレビ

その後の勝敗は有機ELの技術革新次第


 少なくとも2020年の東京五輪頃までは「次世代ディスプレイ」として有機ELがシェアを高めていくはずです。しかし、その後の推移は有機ELの技術革新次第といえます。


 現在主流の有機ELディスプレイは、蒸着方式といって真空状態の中で製造する工程が必要となるため、製造コストが高いと言われています。


 しかし、日本のJOLEDが2020年の量産開始に向けて準備を進めている「印刷方式」と呼ばれる製造方法では、真空状態が必要無く、また材料ロスも少ないため製造コストを大幅に低減できるとされています(2〜3割安い) 将来的には液晶を下回るとの分析もあります(スマホ用では既に有機ELの方が安いとも)


 こうした技術革新が有機ELの「寿命」を伸ばすはずです。


棲み分けが進む可能性も


 有機ELとマイクロLEDはそれぞれ全く異なる特徴を持っているため、例えば大型テレビでマイクロLEDが「覇者」となったとしても、他の分野で有機ELがシェアを握る可能性もあります。


 マイクロLEDは輝度が高く、有機ELでしばしば懸念される「画面焼け」も起こらない特徴を持っています。強いて言うなら、現在の液晶ディスプレイを代替するような使い方に適しています。


有機ELディスプレイを搭載したスマートウォッチ

有機ELディスプレイを搭載したスマートウォッチ

 一方有機ELはディスプレイ全体を大きく曲げることが出来るため、自動車や電子看板などへの活用も期待されています。これまでに出来なかった、新しい領域での活用が期待できるでしょう。また、極限まで薄くできるためスマホやスマートウォッチのようなモバイル機器での更なる活用にも期待できます。




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