どうしてESETは「安い」のか
他のセキュリティソフトと比較して価格が安いESET。ではなぜ、安く買えるのでしょうか。複数の業界関係者への取材をふまえて、分かりやすく解説します。
3年版が安いESET
まずはESETが「安い」と言える根拠を見ていきます。
ESETが「安い」と言われる最大の理由は、3年版の価格設定にあります。
5台版の販売価格で見ると、1年版が7480円であるのに対し3年版は7880円と、使える期限が長いにも関わらず価格はほぼ同じです(いずれも記事執筆時点の価格)
また、3年版の価格で見ても競合と比較して大幅に安い価格に設定されており、ESETというか「ESETの3年版」が安いと言える事実があります。
最新の価格は公式サイトで確認してください。
ESETが安い理由
なぜESETの3年版が安いのか、その理由を説明します。
店頭販売を重視していない
Amazonや価格.comの販売ランキング、また当サイトでの販売本数(参考:セキュリティソフトの人気ランキング))でも常に上位にランクインしているESETですが、家電量販店など「実店舗」での販売はあまり多くないという事実があります。
調査会社BCNが全国の主要家電量販店・ネットショップの販売データを集計して公表しているマーケットシェア調査で、ESETは上位3社に入っていませんし、そもそもESETを店頭に並べていない家電量販店も見かけます。また、並んでいても棚の端の小さなスペースに追いやられています。
私は10年以上にわたり全国各地の家電量販店のセキュリティソフト売り場を見ていますが、ESETがウイルスバスターやノートンのように大々的に陳列されているところを見たことがありません。
実はこうした「実店舗での販売を重視しない姿勢」が、ネット販売でのアグレッシブな価格設定を可能としている側面があります。
ESETではありませんが、ある国内大手のセキュリティ会社のマーケティング部門の方とお会いした際に、「家電量販店との取り決めがあるから、ネット直販(公式サイト)で値引き販売が出来ないんです」という話を耳にしたことがあります。
詳しく聞いてみると、家電量販店とメーカーの契約により、家電量販店での販売価格を下回る価格でメーカー公式サイトなどで販売してはいけない(販売した場合は違約金が発生する)という話でした。
苦肉の策としてAmazonギフト券を「おまけ」として付けるといった形でしか値引きが出来ないそうです。ちなみに、同様の話をパソコンメーカーの人からも耳にしたことがあります。
ESETの場合、店頭販売を重視していないため、ネットで思い切った値引き販売が実現しているとみられます(他メーカーの人から「うちもESETさんみたいに値引きしたいんですけどね」という話を聞いたこともあります)
継続購入を当てにしている
ESETで安いのは3年版だけで、1年版は他社製品と比較しても決して安いとは言えません。3年版を買ってもらおうという意図が見える価格設定と言えます。
セキュリティソフトは一度購入してもらうと、更新して長く使い続けるユーザーが一定数を占めます。一度獲得したお客さんは、更新期限が来る度にお金を払ってくれるお客さんとして一定数が定着するというわけです。
ESETの場合、セキュリティソフトとしては不満になりやすい「動作の重さ」という欠点が無い(PCとの相性によっては重くなる場合もあるが)ため、ユーザーが不満を持ちづらく、他のソフトと比較しても長く使い続けるユーザーは少なくないとみられます。
また、長く使い続ける方が定着率が高まるため、1年版ではなく3年版の販売に力を入れている点でも整合性があると思います。
価格を多少下げてユーザーを獲得し、その分長く使い続けてもらうことで収益を得るビジネスモデルであるとみられます。
今でも安いが以前と比べると値上がりしている
「安い」ESETですが、販売価格は値上がりを続けています。
2019年末現在は5台・3年版が7880円程度ですが、2016年以前には6000円を切る価格で販売されていたこともあります。現在はそのような安売りは行われなくなっており、当時と比較すると「値上がりした」と言えるでしょう。
とはいえ、現在の価格でも3年版は他のセキュリティソフトとしてまだまだ安いと言えます。