中国製の生成AIばかりが「危険」だと言われる理由
業務などでも活用が増えている生成AI。しかし中国製の生成AIは「危険」とされ、使用を禁止する日本企業も増えています。なぜ中国製の生成AIばかり危険だと言われるのか、米国や日本製との違いを解説します。
目次
日本企業がDeepseekの使用を続々禁止に
日本の大手企業が続々と中国製の生成AIを「使用禁止」とする方針を表明しています。
トヨタ自動車や三菱重工業、ソフトバンクなどが、中国の新興企業「DeepSeek(ディープシーク)」が開発した生成人工知能(AI)の社内での利用を禁止していることが12日、分かった。ディープシークを巡っては、中国政府への情報漏えいが懸念されており、企業の間で利用禁止の動きが広がっている。
引用元:【独自】トヨタ、ディープシーク利用禁止 三菱重工も、情報漏えい懸念(共同通信)
トヨタや三菱重工といった日本の伝統的な大手企業が続々と中国製の生成AIDeepSeekを社内で利用禁止としていることが共同通信の報道で明らかになっています。
こうした大手企業でも米国製の生成AIが業務の中で利用されるケースが増えている中、なぜ中国製のDeepSeekは使用禁止となったのか、その背景にある事情を解説します。
なぜ中国製は危険と言われているのか
中国製の生成AIが「危険」だと言われる理由と、米国製や日本製との違いを解説します。
中国企業は政府に情報提供義務がある
中国では2017年に国家情報法という法律が施行されました。この国家情報法は日本の新聞などでも度々、日本にとっての安全保障上のリスクとして取り上げられています。
国家情報法は中国政府が中国国内の企業や個人に対し、政府の諜報活動に協力することを義務付けた法律です。日本経済新聞も社説で以下のように解説しています。
中国が17年に施行した国家情報法で国内の全個人と組織に情報活動への協力を義務付けている事実に変わりはない。米国の動向に関わらず、日本でも情報窃取のリスクを認識して対策を講じるべきだ。
引用元:[社説]TikTokのリスク直視を(日本経済新聞)
米国や日本でTiktokの排除が話題になっていたことがありますが、この背景にも国家情報法の存在があります。中国企業の製品やサービスを利用することで、情報が中国政府に筒抜けになることで様々な形で不利益が生じるリスクがあると懸念されています。
生成AIは特に企業では重要な機密情報をインプットさせて利用する場合があります。会議の議事録の要約や会議資料の作成補助、あるいは経営データの分析や新たな製品のアイデア出しなどに活用する事例が増えています。
防衛産業のような企業での利用にリスクがあることは言うまでもないことですが、例えばインプットさせた情報が中国政府に渡ることで、日本の民間企業の動向を探られて中国政府系企業がその情報をもとに「先回り」することでビジネスを優位に進めるといった経済安全保障上の問題が生じるリスクもあります。防衛産業や基幹産業だけでなく、幅広い分野や企業で注意が必要です。
米国や日本の生成AIも全てが安全ではない
米国やもちろん日本には、中国の国家情報法のような法律はありません。その点において、米国製や日本製の生成AIの安全保障上のリスクは低いと言えます。
ですがそれは政府に情報が吸い取られるリスクが低いだけの話であって、生成AIを提供している企業側が適切に情報を管理するかという点は必ずしも米国製や日本製であっても「安全」とは言い切れない部分があります。
特に業務で生成AIを利用する場合は、情報が適切に管理されるであろうサービスのみ利用することが必要不可欠と言えます。
業務で生成AIを使う時は細心の注意が必要
生成AIではありませんが、ドイツ企業が提供しているDeepLという翻訳サービスでは翻訳結果に特定の企業などの情報が表示されたケースがあり、DeepLを利用した企業が入力した情報が二次利用されている疑いが指摘されています。
利用規約をよく確認する、また信頼できる提供元のサービスのみ利用するなどの対応が必要です。企業内では使用を許可する生成AIサービス、そして使用を許可する範囲(具体的な業務など)を予めホワイトリスト形式で指定しておくとよいでしょう。