中国製EVバスの導入拡大は「危険」と言える理由
昨今、日本国内でも導入が進みつつある中国製の電気自動車バス。しかし、ここには安全保障上のリスクが潜んでいます。中国製EVバスが危険だと言える理由を解説します。
目次
日本でも着実に導入が進む中国製EVバス
中国製EVバスは日本でも導入が進みつつあります。2022年時点で13都府県で65台の納入実績があり、更に数十台の受注残を抱えていると2022年7月時点で報道されています。
中国EV大手のBYDは2030年頃には日本のEVバス市場の30〜40%のシェアを獲得できるという見通しを示しており、EV化が進んでいく中で中国製EVバスが急速に普及することが見込まれています。
中国製EVバスの導入拡大が「危険」と言える理由
急速に普及が見込まれている中国製EVバスですが、安全保障上のリスクが存在します。問題点を指摘します。
有事発生時に使用不能になるおそれがある
EV化とあわせて、今後バスの自動運転化も進みます。自動運転車には通信機能が必要不可欠です。このような通信機能が搭載されることで、ネットワークを通じた遠隔操作が可能です。
昨今緊張が高まっている台湾有事が万が一現実となった場合、日本にも何らかの軍事的な被害が及ぶことが懸念されています。直接的な被害が及ばないにしても、日本は米軍などへの支援で「巻き込まれる」ことが避けられません。
そのような状況下において、中国政府の命令を受けた中国製EVバスメーカーが日本国内で稼働するEVバスの稼働を停止させる事態が発生するリスクがあります。2023年時点では稼働している中国製EVバスの台数が少ないため日本社会に与える影響は小さいですが、シェアが高まるにつれてその影響は増していきます。例えば全国で10%の路線バスがある日突然、運行出来なくなったとしたら、社会はたちまち混乱に陥ります。
遠隔操作以外にも、例えば中国政府が中国製EVのアフターパーツの輸出を停止する事態も想定されます。メンテナンス部品が枯渇すれば遠隔操作が無くともバスは利用出来なくなります。
様々な情報が収集されるおそれがある
中国では2021年に「自動車データ安全管理に関する若干規定」という法律が施行されています。この法律では、自動車データを中国の領土外に持ち出すことを制限するものです。
自動車にまつわるデータは、ときに安全保障上重要なものとなりえるものです。軍事施設に勤務する人が自動車通勤をしていれば勤務の形態が分かります。実際、中国の一部政府機関は2021年に米国テスラ製の電気自動車の敷地内への乗り入れを禁止しました。
中国の一部政府機関の職員が、米電気自動車(EV)大手テスラの車両を職場の敷地内に駐車しないよう指示を受けたことが、関係筋の話で分かった。車両に搭載されているカメラを巡る安全保障上の懸念が理由。
引用元:中国の一部政府機関、テスラ車乗り入れ禁止=関係筋(ロイター)
また、自動運転車に多数搭載されるカメラのデータからは街の経済活動の状況を把握することも可能となるでしょう。例えば街を行き交う自衛隊車両の走行状況などから、部隊の展開状況などを推測される恐れがあります。
空想のように聞こえるかもしれませんが、中国企業が提供する動画共有アプリ「TikTok」は安全保障上の懸念から、欧米の公的機関では職員のスマートフォンへのインストールが禁止されている場合があります。こうした細かな情報収集(諜報活動)は我々の身近なところに潜んでいます。
中国企業が運営する動画共有アプリ、TikTokについて、EU=ヨーロッパ連合の執行機関、ヨーロッパ委員会は、職員が業務用の端末で利用することを禁止すると発表しました。欧米で情報漏えいへの警戒が広がっています。
ヨーロッパ委員会は23日、委員会の端末や職員が業務で使う携帯端末でTikTokを利用することを禁止すると発表しました。引用元:TikTok ヨーロッパ委員会も職員の業務用端末での利用を禁止へ(NHK)
日本の産業を空洞化させる
日本の自動車産業には550万人が従事しています。わが国にとって、最も重要な産業といえるでしょう。
外国製の自動車の普及はすなわち日本製の自動車の販売減と直結します。わが国の自動車産業の競争力低下を加速させる恐れがあり、わが国の経済に深刻なダメージを与える恐れがあります。
中国企業・国民は独裁体制の被害者と言える
優れた製品を多くの人に使ってもらいたい、エンジニアがそのように考えるのは世界のどこでも共通していることだと思います。
万が一、中国製EVバスが遠隔操作によって「使用不能」になる事態が発生すれば、中国製EVは西側諸国からたちまち排除されることになるでしょう。もう二度と導入されることは無くなるはずです。メーカーがそのような事態を望むはずがありません。
ですが中国では政府に強大な権限があり、企業は政府の意向に従うほかありません。中国企業や国民は、独裁体制の被害者と言えます。