セキュリティソフト不要論を掘り下げます
最近、ネット記事などで「セキュリティソフトはもう不要」という議論を目にする機会が少しずつ増えています。現在のところ「必要だ」という意見が多数派ですが、実際のところはどうなんでしょうか。
2007年から「セキュリティソフト比較サイト」を運営している私が、現状の分析と今後の展望を解説します。
目次
不要だとする人たちの主張
まずは、セキュリティソフトが既に不要だと主張している人たちの意見を紹介します。
ウイルスに遭遇しなくなった
PCがまだ普及期だった頃と比べて、ウイルスに感染する機会が減っているという主張があります。実際、私は情報収集のために海外のサイトも頻繁に巡回していますが、セキュリティソフトがウイルスを検知するのは年に数える程しかありません。
ウイルス自体の種類は間違いなく増えている一方、リスクのあるサイトが検索エンジンから排除されることで、ウイルスに遭遇する頻度が少なくなっていると言えそうです。
もう何年もウイルスを検知しないセキュリティソフトなんか、いらないでしょ。という意見が出て来るのは自然なことだと思います。
PCの動作が重くなる
セキュリティソフトをインストールすることで、PCの動作が重くなる。
だからセキュリティソフトなんか必要無い、という暴論を主張する人もいます。
最近は動作が重くならないソフトも多いので、比較サイトなどでちゃんと選んでくださいと言いたいです。もちろん、セキュリティの観点からこの主張は「論外」と言わざるを得ません。
Windows Defenderの存在
WindowsにはWindows Defenderといって、ウイルス等のマルウェアを検知・削除する機能が標準で組み込まれています。Windows10への無料アップグレードが行われていた時、Microsoft社は「ウイルス対策の必要がない」という点をアピールして、Win10へのアップグレードを促していた経緯もあります。
この点については、後半で詳しく解説します。
セキュリティソフト自体がリスクになる
セキュリティソフト自体に脆弱性(セキュリティ上の欠陥)があって、それを悪用した攻撃が行われている。だからセキュリティソフトは必要無いどころか悪、Windows Defenderで充分だ。という主張があります。
確かに、2016年夏にはノートン製品の脆弱性が発見され騒ぎになるなど、散発的にこうしたリスクが報告されています。ですが、現在のところはそれほど差し迫った危険性は無いので、考慮すべきリスクを見誤っていると言えるでしょう。
管理人の見解
いくつかの主張は解説の必要も感じませんが、一考に値する主張もあります。
では、本当にセキュリティソフトは「不要」なのか。私の見解はこちらです。
Windows Defenderの性能は?
「セキュリティソフトが必要無い」と言われる最大の理由は、Windowsが標準装備しているアンチウイルス機能であるWindows Defenderの存在です。
ではこのWindows Defenderの性能はというと、2016年以前は各種ウイルス検出率テストでとても悪い結果が続いており、セキュリティ対策としては不十分と言える水準でした。
しかし2017年、18年の結果を見るといずれのテストでも他の無料・有料セキュリティソフトと遜色ない成績となっています。取り立てて良いわけではないものの、「平均クラス」と言える成績です。
必要かどうかはケースバイケース
自分でセキュリティソフトをインストールしても、Windows Defenderと検出性能に大差無いのであれば、Windows Defenderで充分というのが結論になります。
ただし、注意が必要なのがネットバンキングやネット通販を利用している場合です。
例えば、多くの銀行はネットバンキングの不正送金被害への補償の要件として、「セキュリティソフトを導入していること」を挙げています。
(補償対象外のケースとして)
5.ウイルスソフトを導入していない、または有効期限切れで稼働されていない場合。引用元:インターネットバンキングの被害の補償について(イオン銀行)
スパイウェアの感染有無を確認するため、スパイウェアに対応したセキュリティ対策ソフトのご利用をお勧めいたします。また、セキュリティソフトをご利用いただく際は、常に最新の状態に更新してご利用ください。
引用元:スパイウェアによる不正取引について(ゆうちょ銀行)
市販のウィルス対策ソフトを導入いただき、ウィルス対策ソフト、OS、ブラウザを常に最新版にアップデートをしてご利用ください。
定期的にウィルス対策ソフトでパソコンをチェック(スキャン)してください。引用元:マイゲートご利用時にお気をつけいただきたい事(りそな銀行)
2.個人のお客さまに実施していただきたいセキュリティ対策事例等(中略)
(3)セキュリティ対策ソフトを導入するとともに、最新の状態に更新しておくこと引用元:インターネット・バンキングにおけるセキュリティ対策事例(全国銀行協会)
Windows Defenderを利用することが「セキュリティソフトを導入」したことになるのか、というのは日本語の解釈の問題ですが、不透明な部分があります。
現在のところ、ネットバンキングやネット通販を利用するPCにおいては、自分でセキュリティソフトを導入して使うのが「無難」と言えるでしょう。
逆に、そうした取引を一切行わないPCではWindows Defenderで充分です。