蔓延するステマについて
2007年からのこの「セキュリティソフト比較サイト」を運営して10年になりますが、その間にメーカーや販売代理店からステマ依頼を頂いたことが何度もあります。今回はそうしたステマの実態について紹介したいと思います。
はじめに
予めお断りしておきますが、私自身はこうしたステマ依頼に応じたことは一度もありません。また、掲載しているレビュー記事や評価についても、出来る限り公平な視点での執筆を心がけています。
両親や友人・知人にも自分のサイトをよく利用してもらっているので、見られて困るようなことは致しません。
このサイトではありませんが、同じスタンスで私が運営している新電力比較サイトでは全国紙、週刊誌などからも取材依頼を多数頂いており、こうした姿勢はプロの記者の目から見ても疑念を持たれるような点は無いものと自信を持っています(取材依頼時に、自己紹介がてらセキュリティソフト比較サイトもご覧頂いています)
目次
私に届いたステマ依頼
まずは私がこれまでに頂いた、ステマ依頼の実例をご紹介します。
評価を上げたら報酬アップ
当時高校2年か3年だった覚えがあるので、2009年頃の話だと思います。
あるセキュリティソフトの販売代理店さんから、セキュリティソフトの「総合評価」(現在は廃止)の点数を上げてくれたら、報酬額を1.5倍にするというメールを頂きました。
もちろんお断りするというか、メールの返信すらしていませんが、世の中には汚い大人がいるものだなあということを学びました。この件は開庁したばかりの消費者庁にもメールで連絡しましたが、「民間同士の商取引のことなので関知しないが、いちおう記録として残しておく」という返事が来た記憶があります。
この一件があったので、私は消費者庁という役所を全く信用していません。
評価だけ変えろ
昨年の出来ごとですが、セキュリティソフトの評価だけ変更してくれという「お願い」が来たことがあります。
当サイトではAV-TESTとAV-Comparativesが発表している4つのウイルス検出テストの結果を用いて、その平均値を比較表に「ウイルス検出率」として記載しています。これを変更してほしいという、笑ってしまうような依頼でした。
報酬の増額などの提示はありませんでしたが、上場企業でもこんなぶっ飛んだことをするんだな、という学びのある出来事でした。ちなみに、この件もメールの返信はせず無視しました。
企業によるステマ事例
メーカーや、メーカーなどから販売・プロモーションを委託されている会社による「ステマ」行為も存在しています。
メーカー直営「偽比較サイト」の存在
少なくとも4年以上前から存在を確認していますが、メーカーの委託会社(取引関係を確認済み)の関連先が運営している、セキュリティソフトの比較サイトが複数存在しています。一般のユーザーが見ても単なる比較サイトとしか見えないので、非常に悪質です。
当然、こうした偽比較サイトでは特定のメーカーの製品に無根拠の「高評価」が与えられており、消費者の選択に悪影響を及ぼしています。
上場企業2社が絡んでいる事案(証拠アリ)もあるので、呆れるばかりです。
ステマを誘発する要因
それ自体が必ずしもステマを引き起こすわけではないものの、比較サイトの運営者に「見えざる力」を与える要因があります。
アフィリエイト報酬の差
商品によってアフィリエイト報酬に差があります。
以前は売れ筋のセキュリティソフト同士でも、2倍以上の報酬額の差がありました。なので、比較サイトの運営者には報酬の高いソフトに良い評価を付ける方向でバイアスが働くはずです。
近年は広告主間の競争が活発化しているため、以前ほどアフィリエイト報酬の差は大きくありません(少なくともセキュリティソフトやPCの分野では) とはいえ、特に美容や健康食品の分野のサイトでは未だによく見られますが、アフィリエイト報酬ありきの評価やランキングが健在するジャンルもあります。
ちなみに、良い評価が販売増につながり、その結果として後々に企業側から報酬増の提案を頂くことはあります。私もこれまでに何度も経験がありますが、これは正当な対価として有難く受け入れています(もちろん評価はそのままです)
月極広告
購入が行われるごとに報酬が発生するアフィリエイト広告とは異なり、バナーを掲載するだけで掲載料金が発生する「月極広告」というものがあります。例えるなら、アフィは小売業、月極広告は不動産賃貸業といったところです。
アフィリエイター側にとっては、毎月固定額を頂けるため有り難い存在です。
載せているだけで掲載料がもらえるため、それ自体がステマを誘発するわけではありません。ページビュー数を増やせば掲載料が上がるため、コンテンツの拡充に更に注力するようになります。
しかし、広告の掲載にあたって評価の変更を迫る広告主もいると聞くので、その点ではステマの要因の一つとなる可能性もあります。
なお、当サイトでも月極広告を掲載しておりますが、評価の変更依頼を受けたことはありません(もしあったら掲載拒否です)
未公開株
これは非常に特殊な事例ですが、ある広告主企業から上場前の未公開株を買わないかという提案を頂いたことがあります。未公開株は実際に上場すれば価値が上がりますから、その分が儲けとなるわけです(リクルート事件を思い出してください)
ただ、比較サイトを運営している手前、自分が紹介している商品を作っている会社の株、しかも未公開株を持つのはいかがなものか、と思いお断りしました。評価を変えるような圧力を受けたわけではありませんが、株式の保有は評価にバイアスが掛かる要因となりそうです。
さいごに
全ての比較サイトが報酬を追求するだけの「ステマサイト」というわけではありません。
私の目から見ても、各分野で真面目に商品の紹介に取り組んでいるサイトもたくさんあります。
そうしたサイトが今よりももっと評価され、その結果として収益が上がるような社会になってほしいと願うばかりです。