余計な機能も多い最近のセキュリティソフト
セキュリティソフトには様々な機能が付いていますが、明らかに不必要だと言えるものも少なくありません。2007年からセキュリティソフトのレビューを続けている私が、業界の動きと絡めながら「不必要な機能」を指摘していきます。
目次
必要性が低い機能
具体的に、不必要だと言えるセキュリティソフトの機能を紹介します。
ネットバンキング専用ブラウザ
ネットバンキングをする際の専用ブラウザ機能をそなえているセキュリティソフトがあります。2015年頃から増えてきた記憶があります。不必要というか、使い勝手が著しく悪いため、ほとんどのユーザーが使用していないのではないか、と思います。使われない機能は、あっても意味がありません。
ネットバンキングをする際に、専用のブラウザを立ち上げるという「手間」があるのに加え、通常のChromeやFirefoxといったブラウザと比較して動作が遅い点、あとはパスワードなどのログイン情報を保存できない設定になっているものが多い点、あとはブックマーク機能が無い点などが問題点として指摘できます。
そもそもセキュリティソフトをインストールしていれば、通常のブラウザを使用していてもセキュリティソフトがPCを保護しており、わざわざ専用ブラウザを提供する必要性は低いでしょう。
ウェブカメラ保護機能
ウェブカメラを使った「盗撮」を防止することを謳った機能です。
ウイルス感染などを介したウェブカメラへの不正なアクセスを監視するといった内容ですが、カメラのレンズ部分に付箋やカバーを取り付けることで「盗撮」は防ぐことが出来ます。また、そもそもアンチウイルスなどセキュリティソフトの既存の機能でも不正アクセスは防げなくてはおかしいので、必要性が低い機能と言えるでしょう。
迷惑メール対策(アンチスパム)
あると役立つ機能ではありますが、役立たないことが多いです。
世の中には様々なメーラー(メールの送受信に使うソフト)が存在していますが、セキュリティソフトのアンチスパム機能はOutlookにしか対応していないという例も珍しくなく、他のメーラーを使っているユーザーの役には立ちません。
また、昨今はメーラーを使用せずGmailなどのWebメールを使う人が増えています。プロバイダーから提供されたアドレスもGmailを介して送受信することが可能ですし、その方がウイルス感染リスクも低減できるのでそうするべきなのですが、セキュリティソフトのアンチスパム機能はWebメールの内容まで関与することが出来ないため、Webメールのシェアが高まっていくにつれて必要性が薄れている機能と言えます。
セキュリティソフトの「差別化」は限界に達している
機能を増やすことは、競合との差別化を図るという狙いもあります。その背景にある事情を解説します。
2013年頃から大きな進化はみられない
私は2007年からセキュリティソフトのレビューを続けていますが、セキュリティソフトは2013年頃から大きな変化が無い状況が続いています。
そうした中でも多くのセキュリティソフトが毎年夏〜冬にかけて製品の「リニューアル」を続けていますが、前年版との違いを十分に打ち出せない中、このような必要性の低い機能を追加するしかないというのが業界の苦しいところだと言えます(私もレビューを毎年書き直すのがとても辛い)
必要な機能が未搭載の例もある
一方で、明らかに「必要な」機能が搭載されていない例も目立ちます。
例えばカスペルスキーには脆弱性対策に役立つソフトウェアアップデーターという機能があります。この機能はPCにインストールされたソフトをスキャンし、ソフトの更新プログラムの適用状況を一挙に確認し、ワンクリックでアップデートが出来るというものです。
ソフトウェアのアップデート漏れは、セキュリティ上の欠陥(脆弱性)を放置することにも繋がるため、放置しているとそこからウイルス感染などの被害に遭いやすくなります。
ですがこうした機能を提供しているのはカスペルスキーなど一部のセキュリティソフトに留まるというのが現実です。
また、昨今はPCをカフェなどのフリーWiFiに接続する機会が増えていますが、そうしたフリーWiFiには通信内容を盗み見られたり、改ざんされるリスクがあります。そのような被害を防ぐのに有効なのが「VPN」です。
しかしVPNを標準機能としてそなえているのは、主要なセキュリティソフトの中では今のところノートンだけです(カスペルスキーにもあるが、機能の制限が厳しく使い物にならない)
もっとも、フリーWiFiを利用する機会の無いPCには不必要な機能といえますが、時代のニーズにあわせてセキュリティソフトの機能も変わっていく必要があると思います。