毎年リニューアル発売されるセキュリティソフト
多くのセキュリティソフトは、毎年「ある時期」に集中して新製品としてリニューアル発売されています。なぜか特定の時期に集中しているというのが不思議なので、詳しくその謎に迫りたいと思います!
目次
新製品は秋に一斉発売される
セキュリティソフトが「一斉リニューアル」されるのは毎年秋です。
各製品の発売・発表日程を見てみよう
本当に各社製品は秋に発売されているのか。実際の発売・発表のスケジュールを見てみましょう。
年 | ノートン | ウイルスバスター | カスペルスキー | マカフィー |
---|---|---|---|---|
2016年 | 10月12日 | 9月1日 | 10月13日 | 10月14日 |
2015年 | 10月15日 | 9月4日 | 10月15日 | 10月16日 |
2014年 | 発売なし | 9月3日 | 10月9日 | 10月17日 |
2013年 | 9月20日 | 9月19日 | 11月14日 | 10月25日 |
2012年 | 9月19日 | 8月30日 | 10月11日 | 9月21日 |
2011年 | 9月13日 | 8月25日 | 9月9日 | 9月29日 |
2010年 | 8月27日 | 8月31日 | 9月17日 | 9月3日 |
2009年 | 9月17日 | 9月4日 | 10月16日 | 2月12日 |
2008年 | 9月13日 | 9月19日 | 10月3日 | 9月26日 |
2007年 | 9月21日 | 10月26日 | 9月11日 | 不明 |
2006年 | 9月21日 | (1月30日) | 11月17日 | 9月20日 |
2005年 | 10月14日 | 11月2日 | 10月28日 | 11月18日 |
2004年 | 10月15日 | 8月10日 | 10月15日 | |
2003年 | 10月17日 | 10月24日 | 10月4日 | |
2002年 | 10月17日 | 11月1日 | 2月1日 | |
2001年 | 10月5日 | 11月2日 | 9月7日 |
各社のプレスリリースや、当時のネット記事などから発売日を拾ってみました(一部「発表日」を含む) 例えば2001年に発売された新製品は翌年の「2002年版」としてカウントされる点はご注意ください。
ご覧のとおり、多くの製品が9〜11月に毎年リニューアルを行ってきたことが分かります。これは日本国内に限った話ではなく、海外においても同じことが言えます。
この慣行はいつから始まったのか
「秋発売」の歴史を更に遡ってみると、1991年に辿り着きました。
ウイルスバスターの最初の版が発売されたのが1991年の9月。現在の「リニューアル発売」ではなく完全なる新発売ですが、紛れもなく秋発売です。
また、詳細な発売日までは分かりませんでしたが、米国のコンピューター雑誌「PC Magazine」の1991年12月号に「Norton AntiVirus」の改良に関する記事が載っているので、ノートンもこの頃から秋に改良を行っていたことが伺えます。
秋に発売される謎
では、なぜセキュリティソフトは秋に発売されるのでしょうか。その謎について以下の仮説を考えました。
仮説1 アメリカの年度始まりに合わせている
ITの中心地は今も昔もアメリカです。そのアメリカでは、年度の始まりが秋となっています。会計年度は10月始まり、学校は9月始まりという差はあるようですが、いずれにせよ秋がアメリカでは「新年度」ということになります。
セキュリティソフトの新商品のリニューアルも、こうした年度始まりに合わせたのではないでしょうか。
仮説2 どこかの会社が始めた慣習に業界が追随した
どこかの会社が最初に始めた慣習に、他の企業も続々と続いたのではないかという推測です。
上でも説明したように、セキュリティソフト業界で先駆者であるノートンやウイルスバスターも初期から秋発売(リニューアル)を続けているわけで、後から参入した企業がそれに倣ったと考えるのは自然なことだと思います。
この慣習の「現状」
「秋リニューアル」の慣習について、現状を解説して終わります。
現在は販売戦略的な側面が大きい
2010年ごろまでは、この秋リニューアルという慣習に意味はあったと思います。
どのソフトも、動作が軽くなったり、新しい(魅力的な)機能を追加してきたり、操作画面が見やすくなったりと「ちゃんと」改良を加えてリニューアルを行っていました。
しかし、現在の「リニューアル」は間違い探しのような状態で、正直どこが変わったのか分からないような「リニューアル」が多いというのが現実です。それだけセキュリティソフトという製品カテゴリ自体が成熟しているということなのかもしれませんが・・
では何故今もこの慣習が終わる気配が無いのかというと、「リニューアルを行った」というリリースを出すことでメディアに取り上げてもらえるからです。
リニューアルにあわせてプレスリリースを出したり、メディアを集めて「発表会」を行います。こうしたイベントを起こすことでメディアに取り上げられるため、いい宣伝になるというわけです。
今後も、間違い探しのような「リニューアル」は続いていいくでしょう。