免許証が流出した際の被害と対策は?
免許証の画像データなどが流出してしまった場合、どのような被害が起こるのか。流出した際に「やるべきこと」とあわせて解説します。
目次
度々起こる免許証の流出事件
まずは免許証が流出した過去の事例を紹介します。
マッチングアプリ「omiai」から171万件流出
2021年5月に発覚した事件です。
大手マッチングアプリ「omiai」のサーバーにおいて、2021年4月28日に「意図されない挙動」が観測されたため調査を行ったところ、不正アクセスの痕跡が発見。その後、171万件という膨大な個人情報の流出が発覚しました。
流出した171万アカウント分の個人情報のうち、「約6割」が本人確認用に提出された運転免許証の画像データであるとされており、重複も含めると103万人分の運転免許証データが流出したことになります。
流出したのは2018年1月から21年4月までに提出されたデータであり、その多くがまだ有効期限内の運転免許証の画像データであることが推察されます。
免許証が流出すると起こりうる被害
では、運転免許証の画像データが流出するとどのような被害が起こりうるのか、実際に発生する可能性がある被害の具体例を4つ紹介します。
勝手にクレジットカードを作られる
運転免許証の画像データがあれば、クレジットカードをつくることが可能です。受け取りは免許証記載の住所で受け取る必要がありますが、相手は住所が分かっているので、例えば郵便受けからカードを抜き取るということも不可能ではありません(犯人側としてはリスクが高い行為であると言える)
そのように不正につくられたクレジットカードで換金性が高いものを購入し、金銭を得ることが可能です。免許証の「持ち主」のところには後から高額の請求が届くことになります。
消費者金融で知らぬ間に借金を作られる
免許証の画像データがあれば、消費者金融で借金をすることも可能です。本人の知らぬ間に借金をして金銭を騙し取る手口です。
昨今はウェブで契約できる消費者金融も多く、中には郵便物によるやり取りが一切発生しない消費者金融もあるため、犯人側にとっては狙いやすいポイントと言えそうです。返済が滞った時点で免許証の持ち主に「督促」が行き、事件が発覚するでしょう。
銀行口座を勝手に作られて犯罪に悪用される
運転免許証の画像データを提出することで銀行口座の開設が可能です。免許証と本人の顔を並べて撮った写真を提出することを求めている銀行や、あるいは提出された身分証明書の住所に簡易書留で郵便物を送付して本人確認が行われていますが、例えば郵便物を抜き取るなどの方法でそうした本人確認を突破する手口が考えられます。
そのように不正な方法でつくられた銀行口座は、「足がつかない」銀行口座として特殊詐欺(オレオレ詐欺)などの犯罪行為に悪用される可能性があります。
なりすまし
運転免許証の画像データさえあれば、運転免許証で「本人確認」をする様々なウェブサービスで本人になりすますことが可能です。
例えばマッチングアプリに勝手に登録して何か悪事を働くとか、あるいは盗品をネット買取で売りさばくといったことが可能です。
情報流出に気づいた時点でやるべき対策
運転免許証データの「流出」に気づいた時点ですぐにやるべきことをまとめます。
個人情報信用機関に「本人申告」をする
流出した元々の運転免許証の使用をやめ、免許センターで再発行の手続きを取るのと同時に個人情報信用機関に「本人申告」を行うことをおすすめします。
個人情報信用機関とは、クレジットカードを作る際にクレジットカード会社が信用情報(貴方がカードを持つのにふさわしい人物か調べる)を照会したり、消費者金融がお金を貸し付ける際に情報を照会する機関です。
この個人情報信用機関に対し「免許証データが流出しました」と申告することで、その免許証を悪用してカードを作ったり、消費者金融でお金を借りられてしまうことを防ぐことが出来ます。主な個人情報信用機関は以下のとおり。
これらの信用機関を利用せずにカードの発行や、貸付を行う消費者金融もあるため完全に被害を防げるわけではありませんが、多くのカード会社・消費者金融・携帯電話会社・銀行などがこれらの個人情報信用機関を利用しており、流出した運転免許証データの悪用をある程度抑えることが出来ます。
万が一、見知らぬ請求や督促が届くなどの被害が発生した場合は、直ちに請求を行ったカード会社等に「身に覚えがない」ことを申し出ると同時に、警察に被害を相談してください。
流出させないためにやるべきことは
最後に、そもそも運転免許証の画像データを流出させないために気をつけるべきことをまとめて終わりにします。
不安のあるサービスに免許証データを提供しない
何をもって信頼できるか、出来ないかというのは判断が難しいところですが、例えばたまたま検索で見つけたような、聞いたこともないようなウェブサービスに自分の運転免許証の画像を送信するのは控えるべきです。
以前、「パソコンのレンタル」を行っていた事業者が本人確認用に提出された運転免許証の画像データを悪用した事件がありました。個人情報の収集目的とも言えるサービスが存在する可能性も否定できません。
自分の免許証を他人に触らせない
誰もがスマホを持ち歩いている時代です。ちょっと放置した財布の中から運転免許証を取り出し、スマホで一枚写真を取れば、運転免許証の画像データを得ることは簡単です。
また、マイカーのグローブボックスなどに運転免許証を入れっぱなしにしている人もいるようですが、車上荒らしが運転免許証を見つけて、その写真だけ取って立ち去るというのも可能性としてはゼロではありません(車上荒らしの36%が「無施錠」で発生:神奈川県警データ)