ウイルス対策ソフトとセキュリティソフト、何が違う?
あまり違いを意識されない「ウイルス対策ソフト」と「セキュリティソフト」の違いを、業界の歴史を過去15年遡って分かりやすく解説します。
目次
何が違う?
ウイルス対策ソフトとは
ウイルス対策ソフト(アンチウイルスソフトとも)は、その名の通り「ウイルス対策」に特化したソフトウェアです。
ウイルスやスパイウェアを始めとする「マルウェア」(PCに危害を与える「良からぬもの」の総称)を検知し、駆除する機能があるソフトを指します。
「セキュリティソフト」も同様にウイルス対策が出来るわけですが、ウイルス対策ソフトはウイルス対策に特化しているのが特徴で、例えばファイアウォールや脅威となるウェブサイトをブロックする機能がありません。
「○○アンチウイルス」という名称になっているものが、ウイルス対策ソフトに該当します。ノートンアンチウイルス、マカフィーアンチウイルスWebrootアンチウイルスなどの商品があります。
セキュリティソフトとは
ウイルス対策ソフトよりも幅広い機能を持ち、「守備範囲」が広いセキュリティ対策を行えるものを「セキュリティソフト」と呼びます。
ウイルス対策はもちろん、ファイアウォールや危険なWEBサイトをブロックする機能や、ソフトウェアのアップデートをするもの、あるいは子供に有害なサイトをフィルタリングする機能などをそなえたものが「セキュリティソフト」です。
違いをまとめると・・
ウイルス対策に特化したものが「ウイルス対策ソフト」
幅広いセキュリティ対策を行えるものが「セキュリティソフト」
また、かつては「ファイアウォール」の有無が両者を明確に分ける基準として存在していましたが、現状は必ずしもそれで区別できなくなっています。
境目は曖昧になっている
両者の境目は徐々に曖昧になっているというか、ウイルス対策ソフトがセキュリティソフトに統合されつつある現状があります。
かつては明確に違うものだった
2010年頃より以前は、両者は今よりもはっきりと区別されていました。
「ファイアウォール」の有無が両者を区別する明確な基準として存在していましたが、しかし2010年頃に一部の「セキュリティソフト」が独自のファイアウォールを廃止する動きを見せた結果、それをきっかけとして両者の区別が崩れてしまったと感じます。
ちなみに、2010年発売の2011年版以降ファイアウォールを廃止したウイルスバスターは「総合セキュリティソフト」を名乗っています。当初は「アンチウイルスソフトじゃないか」という批判の声も多く聞かれましたが、今はその点を批判する声は少なくなっています。
※独自のファイアウォールは無いが、有害な通信をブロックするIPSという機能がWindows Firewallと連携して動作する
商品ラインナップの変遷
「ウイルス対策ソフト」が「セキュリティソフト」に飲み込まれていったと言える根拠として、一部のメーカーがウイルス対策ソフトに定義される「アンチウイルス」を廃止する動きがあります。
例えば日本でも認知度が高いカスペルスキーは、2015年6月をもって「カスペルスキー アンチウイルス」の販売を終了しています。
また、現在もアンチウイルスの販売を続けているメーカーについても、公式サイトや販売ページを見るとアンチウイルスの扱いがとても小さく、場合によっては見つけるのが難しいような扱いになっています。
それもそのはず、当サイトでの販売実績を見てもセキュリティソフトに対してウイルス対策ソフトの販売数は100分の1以下と言ってもよい低水準で、ほぼ売れていないという状況です。ユーザーがセキュリティソフトを求めていることから、今後もアンチウイルスを廃止・縮小する動きは続くでしょう。
少なくとも、店頭では既にウイルス対策ソフトはほぼ見かけなくなっています。2005年ごろまでは店頭でも見かける機会が多くありましたが、既に店頭販売は「絶滅した」と言ってもよいでしょう。
ウイルス対策単機能では存在価値が薄い
ウイルス対策単機能の「アンチウイルス」は、その存在価値が揺らいでいるという事情もあります。
Windowsには、OSに標準で「Windows Defender」というアンチウイルスソフトのような機能が組み込まれており、それでウイルス対策が可能です。検出性能は年々向上しており、わざわざお金を払ってまで、ウイルス対策しかできないウイルス対策ソフトを購入する必要性は低くなっています。