スマホやPCで使う「VPN」には有料のものと無料のものがあります。ではなぜVPNを「無料」で提供できるのか、無料VPNのカラクリを解説します。

善良な無料VPNの提供目的

 まずはちゃんとした無料VPNが無料である理由を紹介します。

有料版の購入につなげるための戦略

無料でユーザーを集めるフリーミアムモデル

 多くの無料VPNは、「有料版」を購入してもらうための試供品的な役割を果たしています。

 無料VPNは利用できる容量が制限されていたり、あるいは速度が制限されていたりと様々な形で制限が設けられています。また、有料版の購入を促す画面が表示されることもあります。

 これは「フリーミアムモデル」というビジネス戦略で、「無料」をエサにお客さんを集め、その中の一定割合の人に有料版を買ってもらうことで販売を拡大しよういう試みです。

完全なボランティア

 数は非常に少ないですが、筑波大学が提供しているVPNのようにボランティアで提供されているものもあります(筑波大の「VPN Gate」は学術的な研究を目的として実施)

 世界中のユーザーから無償で提供された中継サーバーを利用して運営されています。

悪質な無料VPNの恐ろしい目的

 続いて、善良でない無料VPNの背後に潜むものを暴露します。

個人情報の収集

 オーストラリア政府の連邦科学産業研究機関(CSIRO)がGoogle Playから収集した283の「無料VPNアプリ」を対象に調査した結果、驚くべき結果が出ました。

・無料VPNの84%がユーザーのWebトラフィックを漏らしていた

個人情報を収集する無料VPN

 過去には無料VPN大手のHotspotがユーザーのトラフィック情報を広告配信のために外部に販売していたことが明るみになったこともあります。

 VPNの仕組み上、提供者に全ての通信情報が把握されます。悪いことを企む人間にとっては、VPNを無償で提供することはとても効率の良い手段と言えます。

ウイルスの拡散

 同じく、CSIROが行った調査ではこんな結果も出ています。

・無料VPNの38%にマルウェアやマルウェアが含まれていた

 無料ではありませんが、過去には日本でもNTTコミュニケーションズのVPNによってウイルス感染が拡がった事例もあります。

ウイルスをばら撒く無料VPN

使う前に提供元をちゃんと調べよう

 有料だから安全、無料は全て危険というわけではありません。有料VPNの中にも、インストーラーにセキュリティ署名が付いていない「ずさん」なものもあります。

 VPNを利用するにあたっては、提供者がどんな事業者なのかをしっかりと確認した上で利用することを強くおすすめします。アプリストアのコメントと評価だけ見て信用するのはダメです。

 VPNを運営するには、ユーザーのインターネット通信の全てを受け止める強力なサーバーを設置することが必要となります。コストの掛かるビジネスですから「完全無料」でちゃんとしたサービスを提供することは不可能です。