小さな本体、また機種によっては冷却ファンを搭載していないということで、スティックPCの「熱暴走」を不安視する声は少なくありません。熱対策は大丈夫なのか、これまで11機種のスティックPCを実機レビューしてきた私が解説します。

冷却ファン搭載モデルを選ぼう

熱対策を考えるなら必ず「冷却ファン」を搭載しているモデルを選んでください。現在販売中のほとんどのモデルがファンを搭載していますが、無いものもあるので要注意です。

起動30分でパフォーマンスが落ちたスティックPC

これまでスティックPCの実機レビューをしてきた中で、MS-NH1というスティックPCは起動から30分程度で本体がかなり熱くなり、動作が低下しました(最高気温33度の日にエアコンを切った状態でテスト)

CPUの速度が1.33GHzから0.37GHzに低下

動作はカクカクになり、全く使い物にならなくなってしまいました。当機種は日本国内ではスティックPCのパイオニア的な存在で、この機種のおかげで「スティックPCは熱に弱い」というイメージが定着したのではないかと思います。

マウスコンピューターの MS-NH1 は熱に弱い

冷却ファンがあれば問題無し

MS-NH1は熱暴走してしまいましたが、後に続いて発売された冷却ファン搭載のスティックPCでは、いずれも長時間連続で使用しても熱暴走といえるような状況に陥らずに使うことが出来ました。

MS-NH1の後継機種も冷却ファン搭載で無問題

熱暴走したMS-NH1と同じくマウスコンピューター製のMS-PS01Fを持っていますが、こちらも長時間つけっぱなしで高画質の動画を再生し続けるなどしても、問題はありません。

また、その他の機種もレビュー時に連続で動画再生などを行っていますが、熱暴走は見られません。本体の温度も、触ってみてそれほど高くなりません。

ファンレスモデルにもメリットが

ファンレスモデルにはデメリットしかないのか、と思う人も多いでしょう。ですがファンレスにはファンレスの良さがあります。

「ファンレス=熱に弱い」ではない

ファンレスのスティックPCがすべて熱暴走するわけではありません。例えばドスパラのDG-STK1もファンレスですが、本体が金属製で放熱性が高いおかげか、長時間連続で動画再生を続けても問題なく使うことが出来ました。

ドスパラのDG-STK1

熱暴走したMS-NH1は本体が樹脂製で、明らかに放熱性が悪いです。最初期のモデルということもあり、熱のことを十分考慮せずに発売されたのではないか、と思います。

静音性が最強

一番の良さは、静音性の高さです。
 スティックPCの冷却ファンは、デスクトップやノートPCのそれと比べると格段に音が小さいですが、無音ではありません。静かな部屋で使っても、ディスプレイから適度な距離を取れば音が気になることはほぼ無いです。また、動画などを再生していれば、その音声で完全にかき消されます。

ファン搭載はどうしても音がする


 ですが、極限まで静音性を追求したいのであれば、音が全くしないファンレスモデルは最強の選択肢となるでしょう。

故障が少ない・・かも?

 冷却ファンという余計な部品を搭載していない分、故障が少なくなる可能性があります。ファンがホコリを吸い込んでしまうこともありません。とはいえ、ファンが無ければ本体が高温になるため、それがスティックPCの本体の寿命を縮めてしまう可能性は否定できません。ファンレスモデルとファンレスモデルでは、明らかに前者の方が熱くなります。


 この辺は一長一短かもしれません。

値段が安い

 構造がシンプルな分、ファンレスモデルの方が安く買えます。CPUやメモリーなど基本スペックはファンの有無に関係なく一緒ですから、コスパは高いといえます。


 微々たる差ですが、電気代もわずかに安くなるようです。

ただし、一時期からファンレスのモデルが発売されなくなり、現在はファンレスのスティックPCを入手しづらい状況があります。